概要
グローバル展開を見据えたBtoB向けECサイトの構築に向けて、市場調査と戦略策定を支援した事例です。
同社では、本社主導の重要プロジェクトとして、海外各国の拠点でも横展開できるBtoB-ECサイトを新たに構築したいという構想がありました。
一方で、社内にはBtoB領域におけるECサイト構築・運用の知見が十分になく、そもそも海外市場において自社のBtoB-EC事業がビジネスとして成立するのかどうかも不透明な状態でした。
そこで、最優先ターゲットである北米エリアを中心に、顧客ヒアリングを通じた市場調査を実施。
顧客ニーズ、EC利用可能性、導入ハードルを整理したうえで、グローバル展開に必要な本社・海外支社の役割分担や推進体制を明確化しました。
その結果、グローバル市場におけるBtoB-ECの展開余地とポテンシャルを可視化し、次フェーズへ進むための戦略的な土台を構築することができました。
支援前の課題
1. グローバル展開を見据えたBtoB-EC構想はあるが、実現性が不透明だった
同社では、本社主導でBtoB向けECサイトを構築し、将来的には海外の各拠点へ横展開していきたいという強い意向がありました。
BtoB領域においても、顧客の購買行動は徐々にデジタル化しており、商品検索、見積依頼、問い合わせ、発注といったプロセスをオンライン化することは、今後の競争力強化につながる重要なテーマでした。
しかし、構想段階では以下のような点が明確になっていませんでした。
- 海外市場でBtoB-ECのニーズが本当にあるのか
- 既存顧客がECサイトを利用する可能性はあるのか
- どの商品群がEC化に向いているのか
- 見積・価格提示・在庫確認などをどこまでオンライン化すべきか
- 各国拠点で運用できる仕組みにするには何が必要か
つまり、BtoB-ECサイトを構築するという方針はあるものの、実際にどのような市場で、どのような顧客に、どのような形で提供すべきかが定まっていない状態でした。
2. 社内にBtoB-EC構築・運用の知見が不足していた
BtoB-ECは、一般的なBtoC向けECサイトとは設計思想が大きく異なります。
BtoCでは、商品を掲載し、価格を提示し、そのまま決済まで完結させる形が一般的です。
一方、BtoBでは、顧客ごとの価格条件、取引条件、見積対応、納期確認、担当営業との関係性など、オンライン化するうえで検討すべき要素が複雑です。
同社においても、BtoB-ECを構築するにあたり、以下のような論点が整理されていませんでした。
- 価格を公開するべきか、個別見積にするべきか
- 既存営業との役割分担をどう設計するか
- ECサイトを新規顧客獲得に使うのか、既存顧客向けの利便性向上に使うのか
- 海外拠点ごとの商習慣や業務フローにどう対応するか
- 本社が共通基盤を持つべきか、各国ごとに運用を任せるべきか
このように、ECサイトを単に制作するだけでは解決できない、ビジネスモデル・業務設計・組織体制に関わる課題が存在していました。
3. 海外支社との役割分担や推進体制が決まっていなかった
グローバルプロジェクトでは、本社と海外支社の役割分担が曖昧なまま進めると、意思決定が遅れたり、現地で運用できない仕組みになったりするリスクがあります。
特にBtoB-ECでは、本社が共通システムやブランド方針を管理する一方で、各国支社は現地顧客との接点や営業活動を担うことになります。
しかし、支援前の段階では、以下のような点が明確になっていませんでした。
- 本社がどこまで主導すべきか
- 各国支社にどの業務を任せるべきか
- 現地顧客の声をどのように吸い上げるべきか
- ECサイト運用後の問い合わせ対応を誰が担うのか
- 各国展開時に共通化すべき部分とローカライズすべき部分は何か
そのため、サイト構築前に、事業として成立するかどうかの見極めだけでなく、実際に運用可能なプロジェクト体制を設計する必要がありました。
支援内容
1. 北米エリアを中心とした顧客アンケート調査
まず、最優先の展開ターゲット国である北米エリアにおいて、顧客アンケートを実施しました。
BtoB-ECの成否を判断するうえで重要なのは、社内の想定だけで計画を進めるのではなく、実際の顧客がどのような購買行動をしているのかを把握することです。
そのため、顧客のリアルな声をもとに、以下のような観点を確認しました。
- 現在どのような方法で商品を探しているのか
- オンラインで商品情報を確認するニーズはあるのか
- ECサイト上で見積依頼や問い合わせを行う可能性はあるのか
- オンライン化に対して不安や抵抗はあるのか
- どのような情報が掲載されていれば利用しやすいか
- 既存営業との関係性をどのように維持したいか
これにより、BtoB-ECの展開可能性を机上の仮説ではなく、顧客視点から客観的に評価できるようにしました。
2. BtoB-ECとして成立する領域の見極め
顧客ヒアリングと市場調査をもとに、同社の商材や取引構造の中で、どの領域がBtoB-ECに適しているのかを整理しました。
すべての商品や取引を一気にEC化するのではなく、まずはオンライン化による効果が出やすい領域を見極めることが重要です。
具体的には、以下のような観点で整理を行いました。
- 顧客が頻繁に検索・比較する商品群
- 既存顧客が定期的に購入する可能性のある商品
- 問い合わせや見積依頼の負荷が高い商品
- 商品情報の整備によって営業効率が上がる領域
- グローバルで共通化しやすい商品カテゴリ
これにより、単なるECサイト構築ではなく、実際に事業成果につながる展開領域を明確化しました。
3. 本社と海外支社の役割分担を整理
次に、グローバルプロジェクトとしてスムーズに推進するため、本社と海外支社の役割分担を整理しました。
本社が担うべき役割としては、サイト全体の方針策定、システム基盤、ブランド管理、商品データ管理、グローバル展開時の標準ルール整備などが挙げられます。
一方、海外支社には、現地顧客のニーズ把握、問い合わせ対応、営業フォロー、ローカル商習慣への対応などが求められます。
このように、本社が共通基盤を整え、各国支社が現地運用を担う形で、グローバル展開に適した推進体制を設計しました。
4. グローバル展開に向けたプロジェクト推進体制を構築
BtoB-ECは、サイトを公開して終わりではありません。
公開後に顧客からの問い合わせや見積依頼を受け、営業活動につなげ、継続的に改善していく運用体制が必要です。
そのため、プロジェクトの推進にあたっては、構築フェーズだけでなく、運用フェーズまで見据えた体制設計を行いました。
具体的には、以下のような論点を整理しました。
- プロジェクトオーナーを誰にするか
- 本社と海外支社の意思決定フローをどうするか
- 顧客ヒアリング結果をどのようにサイト設計へ反映するか
- 各国展開時の優先順位をどう決めるか
- 公開後の改善サイクルをどのように回すか
これにより、グローバルBtoB-ECを単発のサイト制作ではなく、継続的な事業基盤として展開していくための土台を整備しました。
成果
1. グローバル市場におけるBtoB-ECの展開余地を可視化
調査と顧客ヒアリングの結果、海外市場においてBtoB-ECの展開余地があるかどうかを具体的に判断できる状態になりました。
特に、顧客がどのような情報をオンラインで求めているのか、どの範囲までデジタル化すれば利用価値が高まるのかを明確にできたことは、プロジェクト推進における大きな成果でした。
これにより、感覚的な判断ではなく、顧客ニーズに基づいてBtoB-EC事業の可能性を評価できるようになりました。
2. サイト構築前に市場ニーズと運用すべき仕組みを明確化
BtoB-ECでは、事前設計が不十分なままサイト制作に入ると、公開後に「使われないサイト」になってしまうリスクがあります。
今回の支援では、サイト構築前に現地市場のニーズ、顧客の利用可能性、運用時に必要となる体制を整理しました。
その結果、どのような機能や情報を優先すべきか、どのような業務フローを整えるべきかが明確になり、迷いなく次のフェーズへ進める状態を作ることができました。
3. 本社・海外支社が連携できる推進体制を構築
グローバル展開において重要となる、本社と海外支社の役割分担も明確化されました。
これにより、プロジェクトの推進責任や運用上の担当範囲が整理され、海外拠点を巻き込みながら進めるための実行体制が整いました。
単にECサイトを構築するだけでなく、グローバルで活用できる仕組みとして展開するための基盤が完成しました。
成功のポイント
今回の成功要因は、サイト制作から入るのではなく、まず市場と顧客の実態を把握するところから着手したことです。
BtoB-ECは、見た目の整ったサイトを作れば成果が出るものではありません。
顧客の購買行動、営業プロセス、商品情報、見積対応、現地支社との連携など、ビジネス全体の仕組みとして設計する必要があります。
本事例では、顧客ヒアリングを通じて実際のニーズを把握し、本社と海外支社の役割分担まで整理したことで、グローバル展開に向けた実効性の高い戦略を策定できました。
まとめ
本事例では、グローバル展開を見据えたBtoB-ECサイト構築に向けて、市場調査、顧客ヒアリング、戦略策定、プロジェクト体制の構築を支援しました。
海外市場におけるBtoB-ECの展開余地を見極めるとともに、本社と海外支社が連携して推進できる体制を整備。
その結果、プロジェクトを次のフェーズへ進めるための明確な判断材料と、実行可能な土台を構築することができました。

